冷たい雨は貴方に降らない

この光の始まりには君がいる

158日目

担当として、彼を応援しようと心に決めてから200日弱が過ぎていた。

森田美勇人くん、ジャニーズJr.としてテレビや雑誌で活躍をしている。
Travis Japanの一員としては頼れるお兄ちゃん、テレビ東京系列の深夜番組「ガムシャラ!」ではちょっと腰の引けたポンコツキャラとして、今では出演常連組として沢山のファンの方々のハートを鷲掴みにしている。



Jr.屈指のダンスエースというキャッチコピーを掲げ、数々のステージ、舞台で数多くのファンを魅了してきた彼。自身もその身体能力を高く評価しそれを生かしたステージを披露してきた。

私が美勇人くんを応援しようと決めた理由も華やかなステージで堂々と振る舞う彼の姿に心を打たれたからだった。
それくらい美勇人くんにとっても、私にとっても彼のダンスの才能は大切な物であるし、これからも「森田美勇人」を語る上では欠かせない要素であるだろう。



10月31日に美勇人くんは20歳の誕生日を迎えた。恐縮ながら、私もTwitterや友人のLINE等で密かに喜びを共有していた。19歳だった彼を私は殆ど知る事なく、またひとつ、美勇人くんは大人になっていた。20歳としての美勇人くんがどんな決意を胸に明日を生きていくのか、私にはこれっぽっちも分からないのだ。これから先もずっと、ずっと。


そんな風にしてスポットライトを浴びてキラキラと輝く「アイドル」としての彼が大好きだった。このまま辛い事なんて何も起こらず、彼の望んだ未来が暖かく彼を迎えてくれればいいと、ぼんやりと思っていた。「美勇人くんの望む未来」って何なんだろう。考えてもやっぱり分からなかった。どんなに誌面で、テレビの中で、美勇人くんの声を聞いたって、それが具体的な内容であったとしてもピンとはこなかった。どんな悩みを抱えてきたのか、どんな思いで舞台に立っているのか。彼を追いかけて日が浅いからなのだろうか。毎日見てきた筈なのに、私は何も知らなかった気がした。


今日はダンススクエアと中高生読売新聞の発売日であった。(中高生新聞の記事の1つである「ジャニーズJr.の小箱」の美勇人くん担当回は今週が最終であった)Travis Japanとして誌面を飾る機会が増え、意気揚々と地元の本屋さんに向かい、レジに並ぶ前に少しだけ誌面をパラパラと捲ってみた。
対談と簡易なプロフィールだけかと思いきや、個人の項目も充実しており足を止め、美勇人くんの声に耳を傾けてみた


身体&心の癒し方
(前略)
先日、拡輝とシメ、京本、岸孝良で食事に行って、結構深い話をしたんです。じつは自分のことを話すのって苦手で、避けてたところもあったんですね。だけど、ふと「色んな人の話を聞きたいな」って思って。みんなの真剣な想いを聞いていたら、自然と「自分はこう思ってる」って言葉が溢れてきたんです。自分をさらけ出すこと、それを受け止めてくれる仲間でがいることが癒しになるんだなって、20歳になって、ようやく気付けました。

'15年に印象に残ったパフォーマンス
(前略)
自分も踊るのは大好きだし、楽しいと思っていますけどその喜びを周りの人と共有したいっていう意識は、持ってこなかったと思うんです。

__ダンススクエアvol.10より




初めてこの文章を読んだ時まるで電撃が走ったかの様な、そんな感覚に陥った。「ダンスが特技です」「踊る事が大好きです」私が知っている美勇人くんはいつでも笑顔が眩しくて、ダンスが好きだと言っていた、テレビの向こう側そのままの彼の姿だったから。

美勇人くんを追いかけて半年足らず。未熟なファンである私にとって、誌面から発せられた彼の声はとてもリアルなものだった。ストイックで向上心のある人だという事はもちろん知っているつもりだったし、現状に甘んじる人でない事も、分かっているつもりだった。
それでも文面から伝わってくる”かつての自分”と”これからの自分”をしっかりと見据えた美勇人くんが、どこか違う人の様に思えてしまった。私が知っていた美勇人くんは何処にいってしまったのだろう。今、美勇人くんは何を思って舞台に立つのだろう。


大袈裟かもしれないが、美勇人くんは生きているんだなあと実感させられるくらい。それくらい今までの私が見てきた美勇人くんの姿は、画面の向こう側のアイドルだったから。




喜びとも悲しみとも言えない不思議な感情を抱きつつ、帰宅をして今回が最終回と名残惜しい中高生新聞のJr.コーナーに目を向けてみた。

今までの連載で語られてきた美勇人くんの声は、私がよく知る美勇人くんの姿が映し出されていた。
ダンスを頑張っている事、大先輩のバックとしてステージに立てる事を誇りに思っている事。アイドルとしての「森田美勇人」がそこにいた。

そして、最終回に目を通した。
「自分の声」を発信できるJr.にとってはとても貴重な場面。最後に彼は何を語るのだろうか



先月末に、20歳になりました。20歳までにアイドルとして何かしらの形になる事を目指していたんですけど、なかなか思い描いていた姿にはなれていません。



彼の言う「アイドルとしての何かしらの形」とは何を指すのだろう。デビューをする事だろうか。CDを出す事だろうか。ただ、20歳になり、未だ現在の立ち位置にいる事に不安を感じているのだ。Jr.、デビュー、様々なアイドル像があって、少なくとも美勇人くんが目指しているゴールは、此処にはない。



僕がいるのは実力がないと生き残れない世界。その中で、どう生きていくか考えた時に、自分はダンスだけで満足していた事に気付きました。



いつかの安井くんが言っていた言葉をふと思い出す。
「チャラチャラして、楽そうに見える仕事。そう見られるならそれでいい。それがいい」


”そんな事ないよ、ジャニーズの世界はとっても辛いんだよね。分かるよ。”


心の優しいファンは、きっと口を揃えてこう言うのだろう。私もそう、本心からそう言えたら、どれだけ良かったか。

冷めているつもりでもないし、彼らが楽に向こう側の世界を生きているだなんて、これっぽっちも思わない。きっと辛いんだ。きっと悲しいんだ。
それでも、たまに思ってしまう事がある。キラキラしていて、沢山の子からエールを貰える、そうやって生きていける彼らが心の底から羨ましい。その裏側にある苦痛を、私は生涯味わう事はないのだから。死ぬまで彼らを見つめ続けるのなら、私は死ぬまで彼らを羨んで生きていく。華やかな舞台が光で、その代償として犠牲にしてきた物が影だとしたら、ファンが彼らの影の本質に触れる事は決して出来ないのだと思う。それは光の部分だけを私達に与える事が彼らの仕事だから。安井くんも、美勇人くんも。それをよく分かっている彼らだから、私には新聞に載せられた言葉に、涙せずにはいられなかった。
 

ほんの少しだけ、少しだけ
美勇人くんの影の部分に触れられた気がしたから。



歌とMCどちらの能力もなく、他のJr.との差に悔しい思いをした時もあります。ダンス以外に自信がなくて、度胸もない。そんな自分を直したい。だから今は、プライベートの時間の過ごし方を変えました。


ダンスに自信がある彼ではなく、ダンス以外に自信のない彼がそこにはいた。Jr.がメインである舞台に、私は行った事がない。美勇人くんがどんなMCをしたのか、どんな風に歌ったのか。私には何も分からないけれど、少なくともその裏側で悔しい思いでいた彼を知る事はなかっただろう。  
「かっこいい」「頑張ってる」そんなありふれた言葉でアイドルとして輝く彼を美化していたに違いない。



美勇人くんの事を何も知らなかった。そう何度も考える時があったが、そうでなかったのかもしれない。
ただ画面に映し出される彼らが守り抜いていた「アイドル」の姿を、私達が彼らに求める「アイドル」の姿を、そのままに受け止めていたんだ。


20歳、理想像と現実に悩みながらも前に進む1人のアイドルのリアルな声の最後は、こう締め括られていた


目標は芝居、歌、ダンス、バラエティー、全てを極め「森田美勇人が出るからテレビを見たい、歌を聴きたい」という存在になる事です。ファンの支えが励みになります。応援宜しくお願いします。




やはり、美勇人くんはアイドルであった。初めて彼を応援しようと心に決めたあの日に見た、私達が求めるアイドルの姿がそこにはあった。魔法みたいな言葉だ。例え美勇人くんについて何も分からなくても、どんなに叫んでも届かない思いだったとしても、単純にアイドルの彼が好きだと言える。ずっと応援してると、そう言える。






今日、美勇人くんはどんな思いで舞台に立つのだろう。
明日、美勇人くんは何に悲しんで何に喜ぶのだろう。
きっと何も分からない。でも、それでいいと思う。アイドルとして歌って踊る美勇人くんがいて、その姿を追い求める私がいる。それだけで十分だ



それでももし、いつかまた彼らのリアルな声が聞こえたなら。
華やかな世界の裏側を垣間見れる時が来たのなら。
少し立ち止まって、耳を傾けてみよう。
彼らの明日がより一層素晴らしいものであるように、私達の知らない「美勇人くんの望む明日」が、かけがえのないものであるように、そう願いを込めて。